
もうひとつの作品《超自然》では、自身の子供を描くという初の試みに挑戦。描写の完成度以上に、父親としての感情の揺らぎが制作過程に影響を与えたことを作家は明かしている。感情に流されず制作することを信条としてきたチェンは、本作においてはその変化を受け入れ、絵画に想像の余白と生命感を取り入れた。
10年以上の友情を持つというアーティストの加藤泉は、チェンについて「僕たちは国も世代も作品のタイプも違うけど、絵を通して世界に接続したいと思ってる、同じ種類のペインターだ」としつつ、次のようなコメントを寄せている。「父となった彼が世界をどう見てるのか? 新作の個展を東京で見れるのはホントに楽しみです!」

チェンの絵画表現が個人的な経験と深く結びつきながらも、それを普遍的な物語として昇華させる過程を明らかにする本展。鑑賞者にとっても、個人の経験がいかに芸術へと変容し、他者と共有され得るかを考えさせる機会となるだろう。
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