バーバラ・クルーガー、ウクライナの列車を舞台に詩のインスタレーションを展開【2/2ページ】

 この試みにおいて、クルーガーは1920年代のウクライナの前衛芸術家ヴァシル・イェルミロフによる「アジトトレイン(agit-trains)」、すなわち移動式プロパガンダ列車へのオマージュを込めている。かつて戦時下を走った列車が革命のスローガンを掲げていたように、現代の列車もまた詩的かつ社会的なメッセージを運ぶ“メディア”となっている。

バーバラ・クルーガー Untitled (Another Again) 2025
Courtesy of the artist, RIBBON International, Ukrainian Railways, and Sprüth Magers. Photo by Vitalii Halanzha

 クルーガーは、政治、消費社会、イデオロギーへの鋭い批評を、視覚的に力強い言語で発信し続けてきた。赤や黒の背景に白抜き文字で語られる彼女の作品は、広告、建築、インフラといった公共空間を舞台に、見る者の無意識に切り込んでいく。今回の列車作品では、列車が走るたびに言葉の意味が新たな文脈を帯び、乗客一人ひとりの体験や記憶と交錯しながら広がっていくだろう。

 ウクライナ鉄道のCEO、オレクサンドル・ペルツォフスキーは次のように語っている。「この全面戦争のなか、私たちはもはやたんなる公共交通機関ではありません。世界的アーティストとの協働により、創造的な方法でウクライナのレジリエンス(回復力)を世界へ伝えていきたいのです」。

バーバラ・クルーガー Untitled (Another Again) 2025
Courtesy of the artist, RIBBON International, Ukrainian Railways, and Sprüth Magers. Photo by Vitalii Halanzha

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