京都国立博物館 明治古都館
1897年に「帝国京都博物館」として開館した京都国立博物館の明治古都館。宮内省内匠寮の技師・片山東熊によって設計されたレンガ造りの建築が、今年も作品で埋め尽くされた。今年アワードで最優秀賞を受賞した本岡の作品もここで見ることができる。

Photo by Kenryou GU
本岡は1999年広島県生まれ。2024年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程修了。現在は同研究領域博士後期課程に在籍している。「歪曲張り子」という独自の技法で彫刻作品を制作する本岡。自分で染めた紙を張り付けることで、彫刻と絵画の中間に位置するような作品を生み出している。
モチーフという前景と、現実の制作環境という背景を融合させ、ひとつの彫刻として成り立たせるユニークさが際立つ本岡の作品。初回から審査員を務める飯田は、「作品の存在感やパワフルさは群を抜くものであり、空間の操作が見てとれる。時代や社会の転換の可能性を感じさせるポータルサイトとしての作品だ」と高く評価している。新たな空間認識の仕方を投げかける意欲作だ。

Photo by Kenryou GU
本フェアではやや異色の和出伸一にも注目したい。和出は1976年静岡県生まれ。象灯舎の代表も務めている。ここ10年ほどは発表から距離を置いていた和出は今回、描くこと、つくることを一から手探りでとらえ直そうと試みている。
審査員の椿は「絵を描くという行為は何歳になってもできるし、すべての人類に開かれている。そういう絵画を長い空白の後に再び始めたということに惹きつけられた」と語る。その作品は手筋が読めないものの、伝統的な油絵のマチエールの強さからは目が離せない。

Photo by Mikoto YAMAGAMI
アンドレス・マリオ・デ・ヴァローナは、キューバの家庭に生まれ、キューバ系アメリカ人としてマイアミで育った。母親の死の後、マイアミから離れるためニューメキシコへ移住。砂漠での生活で、死に対する執着は生への執着と変容してゆき、他者と真に繋がるということの意味を探求するようになったという。
家族や母親の死をきっかけに写真の世界へと入ったというデ・ヴァローナ。その作品について、審査員の中井は「ロバート・メイプルソープが実現したような均整のとれた美しさ、写真の力を思い起こさせてくれるものだ」と評価する。

Photo by Kenryou GU

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