第3章 成功──「ビアズリーの時代」の到来
1893年春、芸術雑誌『ステューディオ』創刊号で大々的に取り上げられ、20歳のビアズリーは注目の的となった。このとき、大胆な構図の《お前の口にくちづけしたよ、ヨカナーン》が出版業者レインの目に留まり、オスカー・ワイルドの英訳版『サロメ』の挿絵画家に抜擢された。この章では、同作と『ステューディオ』創刊号、そしてサロメの挿絵を連続する流れのなかで見ることができる。



一躍、時の人となったビアズリーは革新的な文芸雑誌『イエロー・ブック』の美術編集を任され、成功を謳歌した。その実際の雑誌や掲載作品にも注目したい。
なお本章では、『サロメ』挿絵に描かれたアングロ=ジャパニーズ様式の調度も見ることができる。日本のモチーフを取り入れながら、当時のイギリス人の好みにあうようにデザインされたこの様式。ビアズリーと同じ時代にオリジナルが建てられた三菱一号館美術館とのリンクに思いを馳せたい。


