展覧会タイトル「居家娛樂(Home Pleasure)」は、「Father’s Videotape」の制作過程で、父親から譲り受けた50本以上のホームビデオの中から見つかった言葉に由来する。これらのビデオには、1980年代から2000年代にかけての父親の性生活や娯楽、旅行、そして「大陸の夢」への憧れが収められており、私的な記録であると同時に、他者に見せることを意図した映像でもあったという。
マンボウ・キーは、これらの映像を出発点としながら、記録された時代の背景を解体し、自身が生きる現代の視点と交差させることで、個人的かつ社会的な問題を再構築する。家族との関係性や、トランスジェンダーとしての自身の存在、そしてアジア人の身体性をめぐる問いを、写真や映像の中に投影する手法は、観客に多層的な視点を投げかける。

本展は、マンボウ・キーのこれまでの活動の集大成であると同時に、東京という新たな文脈の中でその表現を更新する試みでもある。クィア・カルチャー、記憶、身体、そしてアイデンティティの交差点に立つこの展覧会は、現在進行形の問いを鑑賞者に投げかける貴重な機会となるだろう。



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