• HOME
  • MAGAZINE
  • INSIGHT
  • ユニクロが「UT」で挑んだピカソ&マティス。財団も認めた色彩へ…

ユニクロが「UT」で挑んだピカソ&マティス。財団も認めた色彩へのこだわり【3/3ページ】

マティスが見た光から生まれた「青」

 そしてマティスのUTは、遊び心あふれる色彩の切り絵にフォーカス。体が不自由になってもなお絵筆をハサミに持ち替え、切り絵という新境地を開いた晩年のマティスへのリスペクトを込めたコレクションとなっている。「色彩の魔術師」と呼ばれるマティスの作品に関しても、マティスの世界観を尊重しながら、UTとして人々に広く届けるために色彩をどう調整するかどうかに一番頭を悩ませたという。

マティスのUT
© 2025 Succession H. Matisse / Artists Rights Society (ARS), New York
マティスのUT
© 2025 Succession H. Matisse / Artists Rights Society (ARS), New York

 日本ではアースカラーなどが引き続き人気を集めているため、ユニクロもその傾向に合わせて、UTの生地は白や黒、ベージュなどが基本。最初は少し落ち着いたトーンで提案したというユニクロだが、マティス財団から“イカロスの実物のアートワークのブルーはこんなに暗くない、アートに忠実に”というフィードバックがあったようだ。それを踏まえたマティス財団との密なやりとりとリサーチ、熟考を重ねた結果、今回のコレクションは振り切って青地にプリントした大胆なデザインにも挑戦している。

 マティス財団からの色彩へのフィードバックを受けて、UT担当者は実際にマティスが愛し晩年を過ごしたニースを訪れ、マティス作品の色彩への理解を深めたようだ。「地中海気候のニースは一年のほとんどが晴天で、強く美しい光が差し、海と空は澄んだ青色をしています。実際にニースに足を運ぶと、当初の考えは一転。ニースの光が色の見え方にどれほど影響を与えるのかを知れたことで、マティスの色使いへの理解と愛着が深まり、マティス財団協力のもと実際の色彩を最大限に活かすかたちでコラボレーションが実現しました。マティスが愛したニースの光と色彩を想像してもらえたら」。

マティスのUT
© 2025 Succession H. Matisse / Artists Rights Society (ARS), New York

 財団やアーティストとの密なやりとりと丁寧なリサーチによって、たんなる商品化にとどまらず、カジュアルかつ正確にアートを普及させようと試みるUT。その積み重ねによって信頼関係を構築し、アーティストや美術館と何度もコラボレーションが続くケースも少なくない。今後のコラボレーションにも注目が集まる。

美術手帖プレミアム会員限定で、ピカソ、マティスコラボUTのプレゼントを実施。詳細はこちらから。

Exhibition Ranking

見附正康

2025.05.23 - 07.05
ARTRO
京都

木梨銀士「Flux」

2023.02.02 - 02.17
GALLERY HAYASHI + ART BRIDGE
丸の内 - 銀座|東京

非常の常

2025.06.27 - 10.04
国立国際美術館
大阪

Dressing Up: Pushpamala N

2025.06.26 - 08.16
シャネル・ネクサス・ホール
丸の内 - 銀座|東京