今回受賞したジャンナ・カディロワは、1981年にウクライナで生まれ、現在も同国で活動を続けている。キエフのタラス・シェフチェンコ国立美術学校の彫刻科出身ながら、彫刻、写真、映像、パフォーマンスアートと幅広い分野で作品を展開している。ガラス、タイル、セメントといった現地の建築資材を用いたオブジェやインスタレーションが特徴。
カディロワは、これまでコチ・ビエンナーレ(2023、インド)、バンコク・アート・ビエンナーレ(2022、第56回および第58回ヴェネチア・ビエンナーレの国際企画展の一環として開催)、第55回ヴェネチチア・ビエンナーレ(ウクライナ館)、キエフ・ビエンナーレ(2017)などに参加。また世界各地の美術館でも作品を発表しており、ウクライナの最高芸術賞である「シェフチェンコ国家賞」を受賞した初の女性でもある。
カディロワは2014年の「オレンジ革命」時に、政治的アートを展開するグループ「R.E.P(Revolution Experimental Space)」のメンバーとして活動を始め、ロシアのウクライナ侵攻時も国内で戦争の実情を表現する作品を制作。侵攻に対する抵抗を表現し、2023年のアート・パリでは、爆撃によって破壊された公共建築物の内部を記録したシリーズ《Refugees》を発表。同作は、シモン・ラミュニエールがキュレーションしたテーマ企画「Out of Bounds」のひとつとして展示された。
