「文化財」ではなく「文化的遺産」としての支援
「Oriza」という名前は、ラテン語で稲を意味する「Oryza」に由来する。縄文時代に芽生え、弥生時代に実った稲作文化になぞらえ、アート・文化・テクノロジーが交差する新たな地平から、日本の文化を耕し、未来へと紡いでいくことを目指している。
本プロジェクトでは、文化庁による「国宝」や「重要文化財」といった指定を受けていない、いわば制度の隙間に置かれた文化施設を支援対象とする。その背景について、「Oriza」発起人のひとりである袴田浩友は「私たちはこれを『文化財』ではなく『文化的遺産』と呼んでいます」と説明する。
「ワタリウム美術館のように、公的な指定を受けていないものの、日本文化の発信において重要な役割を果たしている施設にこそ、支援の手を差し伸べる必要がある。有形・無形を問わず、今後の日本にとっての『宝』となるものを、民間の力で守っていくことが『Oriza』の理念です」。今後は年に2〜3回のペースで、異なるアーティストによる新作と、それに紐づく寄付先を発表していく計画だという。

杉本博司《WATARIUM ART MUSEUM 2025》
プロジェクト第一弾となる作品は、世界的な現代美術家・杉本博司による《WATARIUM ART MUSEUM 2025》。自身の代表作「建築」シリーズの文脈を受け継ぎつつ、ワタリウム美術館の建物を独自の視点で撮影したピグメントプリントだ。作品には杉本の直筆サインが入り、日本伝統の桐箱とフェルト布で丁寧に収められている。
「建築というのは、完成した建物そのものよりも、建築家の頭の中で思い描かれた姿こそがもっとも美しい。実際に建てられる段階では、現実との妥協が入ってしまう。だから私は、焦点をぼかすことで建築の“魂”を可視化する手法をとってきたのです」と杉本は作品の制作意図について語る。
