第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館、初の共同キュレーター制へ。高橋瑞木と堀川理沙が就任【2/3ページ】

「何者でもない存在」が浮かび上がらせる制度への問い

 2024年末、荒川ナッシュは代理出産と卵子提供を通じて双子の子供を授かった。今回の日本館展示では、自身の双子の子供と数多くの乳児人形を“出演者”とし、LGBTQやジャパニーズ・ディアスポラ(海外移民)に関わる課題を扱う大規模なインスタレーションを構想している。観客を巻き込んだパフォーマティブな体験を通じて、国家やアイデンティティといった制度そのものを再考させるような批評性を備えた作品を目指す。

 荒川ナッシュは「まだ会期まで10ヶ月以上あるので、現時点で内容を固定してしまうと、自分のなかで作品に対する新鮮さや関心が薄れてしまう」とし、詳細の言及は避けながらも、「主軸となるのは『何者でもない存在』としての子供たち」であると述べた。

 「僕の双子の子供たちは、まだアイデンティティを背負っていない“何者でもない”存在です。そうした存在を、国を背負うナショナル・パビリオンという場に登場させることで、LGBTQや移民としてのアイデンティティ、さらに国籍といった制度的な枠組み自体を問い直すことができると考えています」と語った。

 高橋は、「私たち3人は、それぞれ異なる立場や場所にいますが、『日本』という枠組みそのものを、もっと弾力的にとらえ直すことができるのではないかと日々話し合っている」と語った。

 堀川も、「日本やほかのアジア諸国のなかで、ヴェネチアのジャルディーニに常設のパビリオンを持っている国は限られている。そうした地政学的な枠組み自体に対しても、批評的な視点をもって臨みたい」と述べた。

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