修復を率いた建築家シャビエル・ビジャヌエバは、「最初の色彩分析結果が届いたときは信じられなかった」と振り返る。パンデミック下に実施されたストラティグラフィック調査(層構造分析)により、上塗りの下に隠れていた木部や鉄部、スタッコの元の色彩が明らかになった。さらに、3Dスキャンやフォトグラメトリーなど最新技術を駆使し、かつてない精度での修復が可能となったという。
また、今回の工事中にはこれまで知られていなかった螺旋状の混合煉瓦と鉄骨による構造体や、バルコニーを支える新たなヴォールト構造も発見された。いずれも20世紀初頭としては画期的な技術であり、ガウディ建築の構造的革新性を改めて示す成果といえる。


プライベート中庭では、過去に失われたプランターや、パラボラ形状のヘザー製パーゴラ(藤棚)などが再現された。床面には、8万5000個以上のノリャ製モザイクタイルが、当時の手法に則って丁寧に敷き詰められている。これにより、家族の憩いの場として構想された中庭が当時の雰囲気を取り戻している。
また、鉄製の扉や手すり、中庭の壁面装飾なども修復され、ガウディが構想した“都市の中の庭”という空間の再生が実現。ビジャヌエバは、「建物全体がひとつの有機的な作品として調和し始めた」と語っている。

