展示のもうひとつの軸となるのが、「ポロニア(Polonia)」という言葉だ。これは、キュリーが命名した元素「ポロニウム(Polonium)」と、世界各地に暮らすポーランド系移民を指す語であり、移動という行為が持つ喪失や分断のみならず、新たなつながりや創造の可能性を象徴するキーワードとして本展に取り入れられている。


キュリーが国境や社会的制約を超えて研究を続けたように、笹岡の作品もまた、移動を通して交差する視点や経験の可視化を試みている。キュレーターのパヴェウ・パフチャレクは本展について、「分断の時代において、どのように共に生き、記憶を手渡し、新たな関係性を築いていけるのか」を問いかける実験的な場と語っている。
移動や継承という個人的かつ普遍的なテーマを扱いながら、ポーランドと日本の文化的交差点としての意義を備える本展は、現代社会における「つながり」を再考する機会になるだろう。

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