第2章「バロック」では、サンディエゴ美術館が誇るバロック絵画の充実したコレクションに、国立西洋美術館の所蔵品を加え、17世紀美術を地域別に展開。スペイン、イタリア、フランス、フランドル、オランダといった各地域の特色を比較しながら、バロック美術のダイナミズムに迫る。
17世紀初頭のスペインでは、ボデゴンと呼ばれる静物画のジャンルが確立された。その先駆者とされるフアン・サンチェス・コターンの静物画は現存するものが世界でわずか6点のみであり、そのなかでももっとも完成度が高いとされる《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》(1602頃)が本展に出品されている。

コターンについて川瀬は、「彼なくしては、スペインにおける静物画の伝統は生まれなかったと言えるほどのエポックメイキングな画家であり、その影響は17世紀にとどまらず、ゴヤやピカソにまで及んでいます」と評価。今回の出品作は「構図のバランスや厳粛な静けさが際立つ最高傑作」であり、「この作品が日本で公開されること自体が一大イベントと言えるでしょう」と述べている。
この作品は、コターンに続く世代のバン・デル・アメンや、「修道僧の画家」とも称されるフランシスコ・デ・スルバランの《神の仔羊》と並べて展示。静謐な空間構成を特徴とするコターン、装飾的で華やかなアメン、そして神聖な宗教的象徴性をもつスルバランの作品を比較することで、スペイン静物画の奥深さを浮かび上がらせる。

また、この章ではスルバランの画業を、サンディエゴ美術館所蔵の4点と国立西洋美術館所蔵の1点でたどる。初期の厳格なリアリズムから、晩年の理想化された柔和な表現まで、そのスタイルの変遷を一望することができる。


