まず1章となる「天目のいろいろ」では、室町時代の足利将軍家に伝わる中国産の天目茶碗「唐物天目」の優品が並ぶ。当時は、これらの唐物天目から将軍家が用いるのに相応しい品々を選定するために格付を行い、「曜変」をはじめとした「油滴(ゆてき)」「建盞(けんさん)」「鼈盞(べっさん)」などの分類で整理された。ここでは、それぞれの分類やその特徴を表す作品が展示されている。


2章「黒い工芸─漆黒のつやと黒鉄のかがやき」では、その名の通り「黒い工芸」として漆や黒鉄を用いた工芸の優品を紹介。例えば、古来より精製されてきた黒い漆は、油煙や松煙から発生した煤(すす)を加えて生み出されたが、近年では生漆に鉄粉を混ぜ、化学反応によって黒変させる手法が採用されている。双方の風合いの違いにも注目してほしい。

また、刀剣においては茎(なかご)や鐔(つば)に見受けられる黒さびが見どころだ。酸化被膜によって発生するこのさびは鉄の内部を腐食から守る働きがあるとともに、「鉄味」と呼ばれる独特な風合いが生み出されるのだという。こちらの味わい深い「黒」も見どころだ。

