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アニカ・イが描く「もう一種の進化」。北京のUCCAで探るAI、技術と感覚の未来【2/3ページ】

 ここで言う「コラボレーション」とは、様々なスキルを持つ専門家とのコラボレーションだけでなく、細菌、微生物など自然環境に存在する目に見えない力や、テクノロジー、AIとのコラボレーションも意味している。

 例えば、本展で最初に登場するのは、《Mr. Taxi for GG》(2012)というイの初期の作品。プラスチック製のレインコートを使ったこの作品は、人間の身体の形態を思わせるいっぽうで、フード部分に天ぷらで揚げた花束が使われており、死や喪の儀式をほのめかしている。イは2009年に花や植物を天ぷらに揚げる作品を制作しており、これらの作品では、花のロマンティックな美しさが腐敗と衝突し、有機物が脂っこく、腐敗し、臭気を放つものへと変容する。環境的や細菌的な力とともに作品をつくることで、アーティストを唯一の作者としてとらえる概念にも挑戦している。

展示風景より、左は《Mr. Taxi for GG》(2012)

 また、《Another You》(2024)は、人間と非人間の関係に対するイの探求をさらに進める作品である。ニューヨークのコロンビア大学と北京師範大学の生物学者たちと協力して実現されたこの作品は、クラゲやサンゴといった海洋生物のDNAを取り込んだ色とりどりの遺伝子組み換え細菌を使用しており、これらの細菌は展示期間中に成長し、さらに繁殖していく。鏡でつくられたトンネルの構造は、めまいのような感覚を呼び起こすとともに、技術の急速な進歩による現代のめまいを象徴している。

展示風景より、《Another You》(2024)

 映像作品《Each Branch of Coral Holds Up the Light of the Moon》(2024)は、イがソフトウェアエンジニアとともに開発した「Emptiness」と呼ばれるAIソフトウェアを使って制作した作品である。Emptinessは、イの過去の作品に基づいて訓練されたソフトウェアであり、この作品は、イの死後も「アニカ・イ」の作品を創造し続けることができる可能性を示唆している。アーティストの生物学的死後も創造的な過程が続く可能性や人間表現の本質を問いかけている。

展示風景より、《Each Branch of Coral Holds Up the Light of the Moon》(2024)

編集部

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