第1章「画家の誕生と形成 1840-1884」では、ルドンの形成期にあたる作品群を展示し、彼がどのようにして独自の世界観を築いたのかを探る。
ルドンはボルドーで水彩画家スタニスラス・ゴランに素描を学び、1864年にはパリに移住し、ジャン=レオン・ジェロームの画塾でさらに技術を磨いた。その後、版画家ロドルフ・ブレスダンに銅版画を学び、ボルドーの植物学者アルマン・クラヴォーとの出会いが彼の芸術に大きな影響を与えた。クラヴォーを通して、ルドンは自然科学や文学、哲学に触れ、後の芸術表現の素地を築いていった。
この章では、オルセー美術館が所蔵している、ルドンが27歳のときに描いた自画像をはじめ、郷里を描いた風景画、木炭画、初期の石版画集などの作品が展覧されている。

ルドンは1880年代後半から、木炭画や石版画で描かれた「黒」のイメージを世紀末のデカダンスの象徴として多くの文学者たちに注目されるようになる。作家ジョリス=カルル・ユイスマンスがルドンの芸術を紹介したことで、彼の作品はフランス、ベルギー、オランダの文学者たちを中心に広まり、次第に新たな人脈が形成されていった。
1890年代には、ナビ派の画家たちとの交流を深め、若い芸術家たちからは新しい芸術への先導者として慕われるようになる。ルドンの作品のテーマは、闇の世界から神秘的な光の世界へと移行し、彼の黒色の使い方は光そのものを表現する方法へと進化した。第2章「忍び寄る世紀末:発表の場の広がり、別れと出会い 1885-1895」では、色彩への志向が芽生え、ルドンが光を表現するための技法への探求をたどることができる。
