第3章「Modernist/Contemporarian・ルドン 新時代の幕開け 1896-1916」では、「黒」の時代最後の作品から、晩年の色彩の輝きに満ちたパステル画、油彩画を楽しむことができる。

1896年にパリに戻ったルドンは、新しい環境での制作を開始し、ナビ派の装飾的な絵画にも取り組みながら、神秘的なテーマに加えて神話や宗教、人物画なども手掛けた。とくに晩年のルドンの代表作である「花瓶の花」は、彼の芸術の集大成とも言える作品となった。技法においても、パステルの重ね塗りや油絵具の使用により、光の表現に新たな次元を加えた。

この章では、「花瓶の花」の特集展示コーナーや、ルドンの晩年の主要な画題のひとつである「ステンドグラス」を描いた作品であり、東京で初公開された岐阜県美術館所蔵の《窓》(1906頃)などが紹介されており、ルドンの技法の進化やその芸術における新たな表現への探求が感じられる。

前述の高橋は、「ルドンの白黒作品が非常に多くの人々に愛されてきたが、今回の展覧会での大きなポイントのひとつは、前半の『黒』の世界から、後半では非常に明るく、色彩に満ちた光の世界に移行していく展開が、非常にロマンチックで、心に染み入るような感覚を与えることだ」と話している。
また、萩原学芸員も「これらの作品を通じて、従来のルドンの愛好者の方から、初めてルドンを知る方まで、ルドンの作品とその芸術の深さに触れることができる内容となっている」と述べている。
さらに、展覧会の最後には、同館のルオー・ギャラリーで「ルオーとルドン」をテーマにした小企画展も開催されている。20世紀初頭の芸術家たちの共通する芸術的関心にも光を当てることで、ルオーの作品にあるルドン芸術につながる水脈を探る。光と影を駆使し、夢幻的で神秘的な世界を描き出したルドン。その芸術の魅力に触れることができる貴重な機会をお見逃しなく。