作家によると、展示空間は「ヘディ・ラマーの人生の部屋」と「ヘディ・ラマーの発明の部屋」の大きく2つに分かれている。メインスペースで展開される「ヘディ・ラマーの人生の部屋」には、高い天井空間を生かして数多くの電球が吊り下げられている。これは、もっとも古い通信手段である可視光通信を用いたインスタレーション《メルクリウス - ヘディ・ラマーの場合》であり、鑑賞者は太陽光電池でつくられたスピーカーを電球の光にかざすことによって、可視光線に重ねられた音声を聞くことができるという仕組みだ。ここで流れる音声は、ラマーが出演していた映画のセリフや歌声、または発明仲間であった作曲家ジョージ・アンタイルのものであり、発される音声信号は電球によってすべて異なっている。「通信」という技術を介して、ヘディ・ラマーの生き方に触れることができるというわけだ。


また、同スペースには、ラマーが特許を取得した暗号通信システムのほか、信号機、さらにはコーラ・タブレットといった様々な発明品の再現模型が展示されている。残された資料の情報を生成AIに読み込ませ、3Dプリンタで出力されたこれらの品々からは、ラマーの発明に対する意欲的な姿勢も見受けられる。
