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「草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」(京都市京セラ美術館)開幕レポート。版画でたどる草間「反復と増殖」の美学【4/4ページ】

 最終章「愛はとこしえ」では、2004年から2007年にかけて草間が描いた原画をもとに制作された同名の版画シリーズ(全50点中10点)を展示。本シリーズは、草間の抽象的構成から具体的なモチーフへの転換を示すものであり、後の「わが永遠の魂」や「毎日愛について祈っている」へと展開されていく草間の創作の大きな転機と位置づけられる。無色から色彩へと展開する草間の制作手法とも共鳴しており、芸術的進化の過程が凝縮されたシリーズと言える。

第6章「愛はとこしえ」の展示風景より
第6章「愛はとこしえ」の展示風景より

 草間の版画作品のほとんどには、シルクスクリーン、リトグラフ、エッチングといった技法が用いられており、石田了一、岡部徳三、木村希八といった限られた数名の熟練摺師が長年にわたって協働してきた。彼らの存在により、何十年にもおよぶ制作においても一貫したクオリティが保たれ、草間の多彩で複雑な芸術世界を支えている。

 また、今回の展示作品の多くは、2000年に草間が開館前の松本市美術館に寄贈したものである。長年、同館ではその一部しか公開できなかったが、開館20周年を機にすべての作品の額装を終え、22年に初の大規模公開が実現した。

 「私自身もこのとき初めて寄贈作品の全貌を目にし、その質の高さに改めて驚かされた。これらの作品をより多くの人々に届けるべく、巡回展というかたちでの展開が決定された」と、松本市美術館 美術担当係長・渋田見彰は語る。「また、草間さんはこの多数の作品を、自身の芸術への理解を広げるために託してくださった。松本市美術館のみならず、全国各地での公開が叶うことは、その思いに応えるひとつの恩返しでもあると考えている」とも語った。

 草間彌生の版画作品は、たんなる複製ではなく、新たな創作であり、彼女の芸術理念と精神の結晶でもある。反復と増殖をテーマにした本展は、その膨大な創作活動を読み解くための貴重な手がかりを提示するものであり、草間芸術の奥深さに迫る機会となるだろう。

編集部

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