審査員を務めたヘラルボニー最高芸術責任者(CAO)の黒澤浩美は、「本賞を立ち上げた当初から掲げてきた“インターナショナル”かつ“アカデミックに評価される作品を世に接続する”という理念を、今回の応募作家たちが見事に体現してくれた」と語る。また、「美術作品の価値が“説明しやすさ”や“コンセプト重視”に偏るなか、人間の感情やつながりといった根源的なテーマを掘り下げるような作品への関心が高まっている」と現代美術の潮流の変化にも言及した。

本展では、グランプリのほか、審査員特別賞4名、企業賞5名の作品も展示されている。「企業賞」は、東京建物株式会社(プラチナスポンサー)、株式会社サンゲツ、株式会社ジンズ、東日本旅客鉄道株式会社、トヨタ自動車株式会社(いずれもゴールドスポンサー)の5社より授与され、受賞作品は各企業のプロダクトやサービスとのコラボレーションを通じて実社会への展開が見込まれている。
例えば、2024年の企業賞に選ばれた作品のひとつは、トヨタ自動車と連携し、アートをまとったラリーカーとして実際の車両に応用された。また、JAL賞受賞作品は600万個の紙コップとして旅客機内で使用され、アートが日常に自然と入り込む例として注目を集めた。

ヘラルボニーのCo-CEO松田崇弥・松田文登は、今回の応募と審査を経て「世界中に多様な作家が存在し、その創造性が社会に希望や可能性をもたらしてくれる」と語る。また、「HERALBONY Art Prizeを“出口のあるアワード”として機能させたい。受賞で終わるのではなく、そこから作家のキャリアが動き出すような機会をつくり続けたい」と述べ、アートと経済、社会をつなぐ取り組みの持続的展開を強調した。