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「刀剣乱舞」が学芸員を救う? 文化財保存・研究の新たな可能性【2/4ページ】

刀剣乱舞が変えた刀剣人気

──ニトロプラス、あるいは小坂さんはこれまでも焼失した刀剣の復元などに寄付金を拠出されるなど、「刀剣乱舞」原作にとどまらない刀剣にコミットする姿勢を見せてきました。その理由からお聞かせください。

小坂 10年前にDMM GAMESさんと「刀剣乱舞ONLINE」を立ち上げたとき、ソーシャルゲーム(ソシャゲ)はガチャ全盛の時代でした。いっぽうで、その射倖心を煽るシステムが嫌いな人も多かった。ただソシャゲには可能性があるし、自分達でも勉強しながら社風にマッチしたものをやろうと考えたときに、刀剣乱舞ディレクターの小鞠(こまり)が「日本刀はどうですか」と提案してくれた。小鞠は美術館・博物館を巡るのが大好きで、ある博物館でカップルを見かけたことがあった。それまではさほど興味を示さなかった女性の方が、刀剣のコーナーに入った瞬間に「綺麗!」とテンションが上がっていたそうなんです。その話を聞いて、「これはもしかしたらチャンスがあるかもしれない」と、日本刀を調べ始めたのが最初でした。

左から、刀剣男士 三日月宗近、陸奥守吉行、蜂須賀虎徹
「刀剣乱舞ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
©︎2015 EXNOA LLC/NITRO PLUS

 僕はそれまで日本刀について全然知らなくて、「斬鉄剣(編集部注:マンガやアニメに登場する「なんでも切れる刀」)って本当にあるのかな?」と思っていたくらいでした(笑)。でも研究していくうちに面白くなってきて、実際に刀を見に行きもしました。日本では古来より三種の神器に草薙剣があるように、刀剣は日本人の精神と深く結びついています。

 日本刀は褒美や儀式的なものとしても重要視され、日本人の美意識とも通じてきた。そのような存在なのに、博物館での人気は年々縮小傾向にあったそうです。国宝のなかでも一番数が多いジャンルにもかかわらず、です。そこで、もしかしたら僕らが応援できることがあるのではないかと思いました。「刀剣乱舞」がヒットすれば、美術館・博物館に本物の日本刀を見に行く方が増え、そして「綺麗!」と感動してくれるかもしれない。そうすれば今まで刀剣を大切に保存されてこられた方々に恩返しもできるのではないか、と密かに考えていました。

今年行われた「刀剣乱舞 大本丸博 2025」の様子
今年行われた「刀剣乱舞 大本丸博 2025」の様子

編集部

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