みんなで刀剣研究を支援
──いまや刀剣コーナーや刀剣をテーマにした展覧会は大人気です。ゲームが行動変容を起こした。そうした間接的な支援はすでにやってきたなかで、新たに刀研機構(一般社団法人 刀剣文化研究保全機構)を設立することで直接的な支援をスタートさせた。それはなぜですか?
小坂 これまで、消失した蛍丸の復元プロジェクトをはじめ、様々な案件を個人的な裁量で支援してきました。でもそれはあくまで僕の気持ちがそう向かったからです。支援したい気持ちはあっても、その度合いも、置かれている状況も人それぞれ。もちろん「刀剣乱舞」のゲームにのみ興味をお持ちの方もいらっしゃいます。そして、「刀剣乱舞」はゲームですので、以前から課題であった利便性を向上させるサービスとしてサブスクリプションを導入し提供しています。しかしながら、その先で「刀剣乱舞」がつなぐ世界が広がるようにと考え取り組んだ結果が「刀研機構」というかたちです。これからの世の中、間接的にでも関わることで広がるリアルが心と体に豊かさをあたえてくれると感じているからです。


「刀剣乱舞ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
©︎2015 EXNOA LLC/NITRO PLUS
──推し活の延長線上に刀剣保存があると。ではその原資をどのように使っていくのか。具体的な助成事業について教えてください。
小坂 当初は刀剣を所有する美術館・博物館に寄付したり、大学に寄附講座をつくることなども考えていました。しかし学芸員の声を聞くなかで、例えば刀剣研究をしたくてもその予算のないことが大きな課題となっていることがわかった。であれば、そうした研究をきちんと応援できるような仕組みをつくればいいのではないかとなったのです。
橋本 人文学、社会科学から自然科学まですべての分野にわたって、あらゆる「学術研究」を発展させることを目的とする科学研究費助成事業が、いわゆる科研費です。ですが多くの美術館・博物館は研究機関認定を受けていないため、これらの館に所属する学芸員も研究者番号を附されず、科研費の応募資格が得られません。研究機関認定を受けるためには、超えなければならないハードルが多く、これも簡単なことではない。といって潤沢な研究予算を確保できている館は多くはなく、スタッフは館長と学芸員がそれぞれ1人、学芸員が事務まで担っている、というミュージアムが珍しくないことは、ご存知の通りです。
その状況を少しでも変えていくため、我々の助成事業は、応募資格を「研究者番号を持たない(科研費の申請ができない)美術館・博物館職員」に限ることにしました。正規・非正規も問いませんし、研究職ではなく行政職であってもいい。ポーラ美術振興財団や出光美術館助成事業部が美術館・博物館の学芸員向けの調査・研究助成をされているので、そういった先例も参考にさせていただきながら、科研費の行き届かない領域をフォローする仕組みを構築しました。
もちろん「刀剣乱舞」発なので刀剣に関わる研究であることが前提ですが、それでも美術史学、歴史学、考古学を対象とすることで、なるべく広い領域の方々に応募していただけるようにしました。
