──実際の助成金額は?
橋本 刀剣乱舞のサブスクリプションの原資次第なのですが、足りない部分は小坂自ら出資することで、上限200万円で10組まで助成できる体制を整えました。
小坂 僕もドキドキしながら始めた取り組みです。公益性のある一般社団法人というかたちでしっかりと運営していくことが、ユーザーの懸念を軽減できるのではと思っています。また理事会には日本博物館協会専務理事の半田昌之さんや、致道博物館館長の酒井忠順さんにもご参加いただくことで、信頼性を担保しています。いずれは公益財団法人化したいですね。
橋本 調査研究助成のほかに刀剣等の修復・新作に関する助成、また文化資源や学術資源の利活用に関する調査研究については、機構が主体となって行っていくつもりです。小坂も申し上げた通り、刀剣乱舞は日本の文化資源をリソースに立ち上がったものなので、文化資源・学術資源とコンテンツ産業をつなぐ仕組み、またそこで得られた利益を、文化資源・学術資源のホルダーに還元する仕組みを研究していきたい。できれば我々だけでなく、多様な領域の方々と協働したいですし、役所的な用語で言えば「産業創造」も視野に入れて進めていければと思います。
──お話を聞いていると、よりサステナブルな文化支援だという印象です。
小坂 刀剣保全と文化資源の活用はすでにやってきたこととも重なりますが、学術研究の支援はできていませんでした。我々も日々、刀剣の研究をしていますが、自分たちだけではなくて様々な方が担ってくだされば刀剣の解像度はさらに高くなるし、結果的にキャラクターの精度が上がったり、面白いエピソードがつくれるようにもなります。
橋本 実際、刀剣の学術的な研究は、まだまだこれから、という部分が多い。刀剣を専門とする研究者も非常に数が少なく、研究の継承が問題になっています。そうした領域への後押しにもなればと考えています。
──ユーザーからの反響はいかがですか?
橋本 サブスクは3月28日に始まりましたが、ポジティブな反応がほとんどです。刀研機構の立ち上げに意義を感じてサブスクに入った、というお声も多く伺っています。
小坂 「刀剣乱舞に人生を救われた」という声をいただくこともあり、恐れ多いことです。
橋本 ゲームだけではない楽しみ──例えば美術館・博物館に行くようになったとか、着物を着るようになったとか──を刀剣乱舞を介して見つけたという方もたくさんいらっしゃいますよね。
小坂 刀剣乱舞を機に学芸員の道に進まれた方もいらっしゃると伺っています。刀剣業界が元気になればなるほど、刀剣乱舞を末長く続けることができる状況になる。まさにwin-winだなと思います。
橋本 ふくやま美術館館長の原田一敏さんを審査委員長とする、学識経験者による厳正な審査を経て採択された研究は、最終的に機構が刊行する研究誌上で発表していただきます。これはどなたにもお読みいただけるよう、印刷物だけでなくダウンロード版も用意する予定です。またこの研究誌では論文の公募を行い、査読誌として育てていきたいとも考えています。そして研究の成果発表会を公開で実施することで、助成を受けた学芸員に支援者、つまりゲームユーザーの姿が見え、ゲームユーザーにも研究支援の実感を持っていただけるようなかたちに持っていきたい。学芸員にとっても、展示に足を運んでもらうのとはまた違うモチベーションにつながると思います。ぜひ多くの方に応募いただければうれしいです。
©︎2015 EXNOA LLC/NITRO PLUS