不確実性の時代におけるアートの足場
国際情勢の緊張や世界経済の不透明感が強まるなか、A Thousand Plateaus Art Spaceの劉傑は「いまはグローバルな構造の転換期にある」としたうえで、「ポスト・グローバル化」あるいは「脱グローバル化」への移行が進んでいくとの見方を示す。そうした時代だからこそ、アート業界内での横断的な連携や対話の重要性が、これまで以上に増しているという。
Galerie Urs Meileのマイレも、こうした時代において「コミュニティの力」が鍵になると指摘する。アーティスト、コレクター、キュレーター、メディアなどと信頼関係を築いてきたギャラリーや文化機関は、外部環境が揺らぐなかでも安定した基盤を持ち、いまこそネットワークと対話が本質的な力を発揮するときだと強調する。

劉はまた、今後の戦略として日本との連携をさらに強化していく構想を明かした。近年は「温泉大作戦」や「Art Collaboration Kyoto(ACK)」などを通じて日本のコレクターや関係者との接点を築いており、今後は中国側のプロジェクトを日本に紹介するだけでなく、日本人アーティストとの共同企画にも積極的に取り組みたいとしている。
経済・政治の先行きが一層不透明になるなかで、アートマーケットもまた慎重かつ選別的なフェーズに移行しつつある。ギャラリストたちへの取材からは、短期的な熱狂よりも、長期的な視点に立ったコレクションや着実な展示活動、そして作品を取り巻く人々との信頼関係づくりが今後の鍵になることが浮かび上がってきた。
グローバル化が揺らぐ現在、アートが持つ「地域を越えてつながる力」に改めて注目が集まっており、地域内での連携や対話を深めることが新たな可能性への扉をひらくかもしれない。北京で過ごした数日間は、そんな変化の兆しを静かに、しかし確かに感じさせるものだった。
