古邨といえば、まず「鳥」
花鳥画のなかでもとくに古邨が得意としたのが「鳥」だ。本展では古邨の鳥を画題とした作品を、「花樹と鳥」「月下の鳥」「雨に濡れる鳥」「鳥の家族・つがい」「雪景色のなかの鳥」「水辺の鳥」「鳥百姿」と、描かれた情景をテーマに追っていく。
花とともに華やかで愛らしい様子を見せたり、月の下に寂寥感とともに佇んだり、あるいは雨や雪のなかの孤高な姿を見せ、ときに水辺に優雅に憩う。様々な種類の鳥たちの、多彩なシーンが描かれている。いずれも、しっかりとした輪郭線に囲まれた色面が特徴といえるそれまでの浮世絵版画とは異なり、淡く、抑え目の色彩のグラデーションに彩られた、水彩画のようにも見えてくる。とくにモノトーンの濃淡が醸し出す雰囲気はすばらしい。



それぞれの鳥たちの表情にも留意したい。雀はそのにぎやかな鳴き声が聴こえてきそうで、鷹は力強く勇猛だ。ミミズクは悪人面ともいえそうな不愛想が楽しい。猛禽に緊張する小禽たちの姿には物語を紡ぎたくなるし、ひよこの無邪気さには、獲物を取りあう残酷さも描写される。伝統的な花鳥画の構図を踏襲しつつ、より生き生きと引き立てているといえる。


