
プロローグで浮世絵と北斎の基礎知識を得たあとは、いよいよ北斎の実作をジャンルごとに鑑賞する第1章「北斎の作品をみてみましょう」が始まる。本章では「版画(錦絵・摺物)」「版本」「肉筆画」の3カテゴリーに分けて、代表的な作品が展示されている。

なかでも目を引くのが、世界的に知られる「冨嶽三十六景」シリーズのひとつである《神奈川沖浪裏》。本作では、大波とその中を進む舟、遠景に静かにたたずむ富士山という構図によって、動と静のコントラストが鮮やかに描かれている。また、手前の波が富士山のかたちと重なるように描かれているなど、構図上の工夫が紹介されており、鑑賞者に「なるほど」と感じさせる発見の喜びを与えてくれる。