最後のパート「絵をみて、みえてくる?」では、《冨嶽三十六景 五百らかん寺さゞゐどう》などの作品を通して、構図や視線誘導の工夫に着目。鑑賞者が自身の感覚で新たな「見え方」を発見できるような体験が提示されている。

本作に描かれる「さゞゐどう(三匝堂)」は、内部が螺旋構造になった特徴的な建築で、かつて江東区に存在した五百羅漢寺の仏堂である。北斎は、この建物や人物の姿勢を巧みに配置し、鑑賞者の視線が自然と画面中央の富士山へと導かれるよう構成している。
また、初摺でしか見られないベロ藍の鮮やかな色彩も、本展の見どころのひとつ。今回の展示では、こうした希少な初摺作品を間近に鑑賞できる貴重な機会となっている。


本展では、専門的な知識がなくても作品の魅力に触れられるよう、解説文に平易な言葉が用いられており、子供から大人まで幅広い層が楽しめる内容となっている。自由研究や初めての美術館体験にも適しており、夏休みの文化的なお出かけ先としても最適だ。