「Dressing Up: Pushpamala N」(シャネル・ネクサス・ホール)開幕レポート。仮面の中の真実を探して

写真のなかで演じ、歴史や社会の構造を可視化するインド出身のアーティスト、プシュパマラ N。その日本初個展「Dressing Up: Pushpamala N」が、東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールでスタートした。会期は8月18日まで。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より、プシュパマラ N「The Navarasa Suite(ナヴァラサ スイート)」シリーズ

 写真を主要なメディアとし、視覚文化と歴史、フェミニズムの交差点を鋭く照射するインド出身のアーティスト、プシュパマラ Nの個展「Dressing Up: Pushpamala N」が、東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開幕した。

 本展は、シャネル・ネクサス・ホールの開館20周年を記念して昨年より始動した、アジアの写真家を紹介するシリーズの第2弾。2025年初頭に京都で開催された「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」におけるプシュパマラの展示に続き、日本での本格的な個展開催は今回が初となる。

展示風景より、プシュパマラ N「Phantom Lady or Kismet(ファントム レディ あるいはキスメット)」(1996–98)シリーズ

 プシュパマラ Nは、インド南部のバンガロール(現ベンガルール)を拠点に活動するアーティスト。彫刻家としてキャリアをスタートさせたが、1990年代半ば以降は写真や映像を中心とした表現へと移行。自身が様々な役柄に扮し、既存のイメージや神話、歴史、映画的手法を引用しながら演出された写真空間を構築する「フォト・パフォーマンス」や「ステージド・フォト」の先駆者として、国際的に高く評価されている。

展示風景より、プシュパマラ N「Phantom Lady or Kismet(ファントム レディ あるいはキスメット)」(1996–98)シリーズ

 本展では、ムンバイを舞台にした3つの代表作シリーズ「Phantom Lady or Kismet」「Return of the Phantom Lady」「The Navarasa Suite」が紹介されている。いずれも映画的な演出と明確な物語性を備え、伝統的なインド美学や大衆文化、国家的記憶といった主題を背景に、観る者に多層的な解釈を促す作品群である。

編集部

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