会場での作品解説ツアーにてプシュパマラは、「このようなかたちで日本で大規模に作品を紹介できることをとても嬉しく思っています。まるで小さな回顧展のような展覧会で、日本でこれほどまとまったかたちで自分の作品を紹介するのは初めてです」と語った。

展示された作品はすべて、彼女自身が監督としてスタジオで演出・構成を行い、主演も務めるという構造になっている。キャストや技術スタッフは友人や非専門家によって構成されており、ハイテクなデジタル加工とは対照的に、アナログかつ演劇的な演出が用いられている。あえて作為性を強調することで、「真実とは何か」という問いを浮かび上がらせている。
シリーズのなかでも「Phantom Lady or Kismet(ファントム レディ あるいはキスメット)」(1996–98)は、プシュパマラがフォト・パフォーマンスの手法を確立した初期の重要作である。モノクロ写真で構成された本作は、1930~40年代のフィルム・ノワールやインドのアクション映画、アメリカのコミック『Phantom』などを参照しつつ、仮面をつけた双子の姉妹による冒険劇が描かれている。プシュパマラは二役を自ら演じ、視覚文化や女性表象への鋭い批評性が込められている。
