伊藤が2000年代に発表した「尺度」シリーズは、手や足など身体の一部を象ったもの。人間的な「ものさし」のあり方を探るこのシリーズは、デジタル化が進む現代において、人間が身体性に立ち戻ることの重要性を静かに訴えかける。

2010年代から取り組み始めた「抱擁」は美術史と接続するシリーズだ。その着想源はコンスタンティン・ブランクーシの《接吻》。向かい合いながら溶け合うような2人の人物だが、ブランクーシのそれとは異なり、そこには明確な色彩の差が見られる。人間と人間が交わることの重要性と難しさの両面を問いかけるようだ。


