大阪・関西万博で見るべき「シグネチャーパビリオン」【3/9ページ】

「Dialogue Theater -いのちのあかし-」(河瀨直美)

「Dialogue Theater -いのちのあかし-」パビリオン
「Dialogue Theater -いのちのあかし-」パビリオンのシンボルツリーのイチョウ

 映画作家の河瀨直美がプロデュースするパビリオン「いのちのあかし」は、奈良県の十津川村立折立中学校と、京都府の福知山市立細見小学校中出分校という、ともに廃校となったふたつの校舎を活用した建築となっている。設計はSUOの周防貴之が手がけており、木造校舎の趣はそのままに外光がふんだんに入る。パビリオンの中庭は、奈良や京都の里山の植生を再現した庭園となっており、様々な草木花と触れ合うことができる。また、庭園にはシンボルツリーとして旧中出分校の校庭にあったイチョウの木が植えられており、夏には葉を茂らせ、秋には黄色い葉を見ることができるという。

 本パビリオンは、対話を通じて世界の至るところにある分断を明らかにし、解決を試みる実験場だ。来場者には受付でカードが手渡され、そのカードにはその日の「問いかけ」と、対話者が記されている。なお、対話者には来場者が選ばれることもある。校舎内は「対話シアター」となっており、映画館のように階段状に席が並んでいる。ここで、選ばれた対話者がスクリーン上の遠隔地にいるもう対話者と、決められたテーマについて10分間ほど対話する。来場者はこの2人の対話を、自分の考えと比較しつつ、映画を見るように鑑賞することとなる。対話には脚本はなく、一度として同じ対話はない。

対話シアター
対話シアター

 対話が終わると、世界6ヶ国の監督が撮り下ろした6つのエンディングムービーのうち、どれか1本が上映される。例えば、イスラエル人の脚本家・監督のケレン・ベン・ラファエルは、イスラエル人として友人であるパレスチナ人女性について語る映像を作成した。作中では、イスラエルによるパレスチナへの攻撃が続く両者の関係において、対話によって紛争の解決を目指すというラファエルの考えが示される。

対話シアター

 対話についてのパフォーマンスを見たあとは、旧折立中学校北棟を利用した「ガラスの集会所」で、対話を反芻することができる。木製の椅子が置かれたこの場所では、校舎の移築に関わった人々が語る映像を見ることが可能だ。河瀨が来場者とともに考える、対話を本パビリオンでは触れることができる。

「ガラスの集会所」

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