「松山智一展 FIRST LAST」(麻布台ヒルズ ギャラリー)レポート。独自の視点でとらえる「世界」【6/6ページ】

 展示は、本展タイトルと同じ「First Last」で締め括られる。

 象徴的な《Passage Immortalitas》は、M字型の変形キャンバスの大作。ボッティチェリの《チェステッロの受胎告知》のシーンを中心に、様々な要素が室内空間に配置された作品は、松山自身のルーツにも関わるキリスト教を取り込むことで、自らのアイデンティティに向き合う姿勢が垣間見える。

展示風景より、左が《Passage Immortalitas》(2024)

 世界初公開となる巨大絵画《We The People》は白眉だ。アメリカのスーパーマーケットを舞台にした本作には、ジャック=ルイ・ダヴィッドの《ソクラテスの死》や《マラーの死》から引用されたモチーフが大きく描かれていることに気づくだろう。その周囲を囲むのは、緻密に描きこまれたアメリカの菓子や薬品だ。アメリカの食品業界や製薬業界が抱える社会問題を示唆するような本作。そのタイトルがアメリカ合衆国憲法の冒頭文であることからも、アートの社会的な役割を問いかけようとする松山の姿勢が見て取れる。

展示風景より、手前が《We The People》(2025)
展示風景より、《We The People》(2025)の部分

 こうした「First Last」シリーズは、松山がアメリカ社会が抱える諸問題を起点に、自身の特異な背景がもたらす独自の視点を通して世界をとらえなおそうとするものだ。それらをどのように読み取り、どのような物語を紡ぐかは、鑑賞者それぞれに委ねられている。

編集部

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