第2章「季節を描く」は、四季の風趣のなかに息づく女性たちを描いた作品を取り上げる。春夏秋冬、松園は様々な風物を感じさせる美人画を描いてきた。
《三美人之図》(1908)は桜の花びらが舞う晩春に、花見にでかける3人の女性を描いた作品だ。縦長の構図に巧みに3人を配置しながら、それぞれ異なる年齢に即した顔つきや着物を描きこんでいる。

《待月》(1926)は、女性の後ろ姿を描き、さらに人物を二分にする柱を中心に据えるという、大胆な構図の挑戦的な美人画だ。月が出るのを待っている女性が欄干から身を乗り出しているが、彼女の顔は月が出る空を見上げてはおらず、その視線は下方に注がれている。待っているのは月ではなく、誰かなのではないか。金襴と思わしき帯を見ながら、想像がかき立てられる。
