第4室「 写真からきこえる音」(企画=山﨑香穂)は、「音」を意識させる作品を展示している。写真は、人々の生活や行動を被写体とするだけでなく、そこに存在する生活音をも記録する。畠山直哉の写した団地の照明、植田正治による土地に生きる人々の音の暗喩のような写真、宮本隆司が撮る人々の生活音があった場所としての廃墟などは、いずれも写真でしか感じられない音を宿している。



最後となる第5室「うつろい/昭和から平成へ」(企画=石田哲朗)は、95年の本館開館時に開催された展覧会「写真都市東京」の持っていた空気を、当時の出展写真を展示することで再現した。同展のテーマは「東京という街を80年代以降の写真家たちがどのように表現したか」というものだったという。長野重一、塩田登久子、瀬戸正人、荒木経惟らの写した当時の「いま」の東京が、現代においてはノスタルジーの対象として意味が変化していることは興味深い。


ほかにも本展では、マン・レイ、アウグスト・ザンダー、赤瀬川原平、高梨豊、林忠彦、杉本博司、オノデラユキ、長島有里枝など、写真史を学ぶうえで知っておくべき作家の作品が展示されている。30周年の節目に、改めて写真とう芸術表現の基本を学ぶことができる展覧会がはじまった。

