最初の展示室には細長い建物状の作品《学校》(2024/25)がある。赤い屋根と黄色い外壁という要素は、オーストリアで見られる一般的な学校のものだが、その外観は細長く歪にゆがんでいる。内部にある机や椅子なども建物と同様に圧縮された形状であり、足を踏み入れると強烈な圧迫感がある。


室内で目につくのは、壁面に貼られている、青森の子供たちが過去に目にしていたと思われる印刷物の複製の数々だ。なかには国威発揚のためのメッセージを記したものもあり、現在の価値観からすると、これらが学校で教えられていた事実は受け入れがたい。物理的に歪んでいる校舎内で、このような過去の価値観を展示することで、学校で教えられる知識や常識の価値が時代とともに変わっていくことを強調していると言えるだろう。もちろん、それは現代においても例外ではない。また、ヴルムの故郷であるオーストリアと日本は、第二次世界大戦で敗戦し、その教育が根本から見直された経験を持つ。両国の関係を念頭に置けば、本作をより現実的な問題提起として受け取ることができる。
