最後の展示室では「平らな彫刻」シリーズと「皮膚」シリーズを見ることができる。壁面に飾られた「平らな彫刻」シリーズは、一見すると絵画に見えるが、タイトルのとおりヴルムはこれを彫刻ととらえている。各作品のキャンバス上にペイントされているのは作品タイトルの文字であるが、その文字は上から押されたかのように潰れていて、可読性が著しく低い。平面として解釈されることがあたりまえである文字に、押しつぶすという立体的な概念を与えることで、彫刻としての三次元性を付与している。

展示室中央にある「皮膚」シリーズのひとつ《立っている花 2》(2020)は、一見すると何かしらの花の彫刻に見える。しかしながら、下部にスニーカーが存在することで、本作が「立っている人物」の身体が大きく削られた状態の彫刻であることに気がつく。身体はどこまで削り取られると身体ではなくなるのか、あるいはすべて削り取られてもそれは身体なのか。そんな問いが投げかけられている。
