「何もないところから彫刻作品をつくろうという発想が、自分には基本的にありません」と、川俣がコンセプトを説明する。
「街灯は街を歩いていればいくらでもありますよね。普通はみんなまっすぐ立っている。しかし、目的はライトがその周りを照らすことだから、まっすぐでなければいけない理由はないはずです。街灯の柱がちょっと斜めになっていたり、歪んで並んでいたり、1ヶ所にぼーっと集まっていたりすると奇妙な感じになりますよね。あまり見かけないような光景というか、既成概念から少し外れた景色を生み出そうと思ってこの作品を手がけました」。



通常、街中にある街灯は数年おきに交換される。川俣はこのプロジェクトで、古くなり、使用されなくなった街灯を集め、修理し、白く塗り直して角度を調整しながら作品として蘇らせた。割り箸を用いて模型をつくり、ポストの角度や高さの組み合わせについて吟味を重ね、磨きや塗装、設営などの作業は此花区の職人たちに任せた。
「僕は図面が引けませんから、ひたすら模型をつくって考え、あとはその模型から図面を起こしてもらったら、それを此花区の地元の業者さんのところにもっていきました。たくさん町工場があって大勢の職人さんたちがこの町にはいるので、色々と知恵も出していただきましたし、最初のメチャクチャな模型から変えていくプロセスは楽しかったです。安全面を考えると緻密な構造計算が必要ですし、予算もありますから無茶苦茶なことはできない。先に大きなプランを提案して、それを現実化していくプロセスはなかなか面白いものなんです。通常だと2年はかかるものですが、今回は去年の夏頃に話が来て、お披露目が3月末ですから、本当にスピーディーだったと驚いています」。