では「音」についてはどうだろう。石田は音楽を取り入れた映像作品も制作している。例えば《フーガの技法》(2001)は、J.S.バッハの《フーガの技法》の3曲を、視覚に置き換える試みだ。重層的な繰り返し構造を持つフーガの展開を線と長方形のドローイングを描き重ねることで表現。約1万枚もの原画を数年かけて描くことで映像化した労作だ。

石田が「時間」「光」「音」といった様々な視点から、ドローイング、そして絵画という行為にアプローチをしていたことがわかる。会場では石田の初期作品《部屋/形態》(1999)も展示されているので、その後の展開を念頭に本作を振り返ってみるのも興味深い。
