重要文化財《宝誌和尚立像》(平安時代)は観音の化身と信じられた南北朝時代の僧・宝誌和尚の立像。顔部分の造作は、面を裂いて観音の姿をあらわしたという説話に基づくものだ。奈良時代に中国から伝わったとされる宝誌和尚の姿だが、この像は日本で唯一現存する作例だという。

なんとも色鮮やかな陣羽織は、豊臣秀吉所用のもの。孔雀や鹿など多彩なモチーフが綴織であらわされている。特殊な金属糸が使われていることから、サファヴィー朝ペルシアの宮廷工房で製作された室内装飾品だったと考えられており、南蛮船で輸入され、陣羽織に転用された。

なんともインパクトのある坐像は、中国人仏師・范道生(はんどうせい)の代表作である、十八羅漢坐像のうち《羅怙羅(らごら)尊者像》(1664)。出家前の釈迦の子である羅怙羅が自らの胸を開き、自分の中に仏がいることを伝えている。范道生は隠元禅師によって宇治の萬福寺に招かれ、仏像を制作。その際、京都の仏師が手伝い、范道生の作風から影響を受け「黄檗様」と呼ばれる新しい様式が生まれた。

ここで紹介したものは全体のごく一部。約200件の出品作を通覧することで、様々な文化が「るつぼ」の中で溶け合うことで生まれた日本美術の多様性を実感できることだろう。


