そして、半屋上階である5階では、インスタレーション《ナルシスの庭》(1966/2025)を見ることができる。外の風景を映すステンレスの球体群を覗き込むと、まるで鑑賞者自身が分裂し増殖しているかのような印象を受けるだろう。反復と増殖を繰り返した果てにたどり着くであろう「自己消滅」という救済。本展を通して見ると、本作に新たな意味が生まれてくる。

草間の闘いの歴史であり、同時に創作の根源にある「病」に正面から向き合った本展。生きていくうえで誰もが対峙することになる「病」とどのように付き合うのか。草間というひとりの芸術家の実践と昇華は、そのためのヒントと勇気を与えてくれるのではないだろうか。