心字池で作品を見せるのは久保寛子だ。《やさしい手》は、弥勒菩薩や古代エジプトのヌト神、赤子の手などを参考にした手の造形に、ブルーシートの皮膚を纏わせたもの。高さは約4メートルと巨大だが、その重量感をなくすため、水面への接触点が極限まで小さく設計されている。日本人にとっては災害時や工事現場で見る機会が多いブルーシートに覆われた巨大な手は、天から人々に手を差し伸べるようだ。

久保は草地広場でもう一つの作品《ハイヌウェレの彫像》を見せる。縄文土偶をモチーフにした本作は仰向けに寝そべった女性型の鉄の構造体に約800kgの土を塗ったもの。縄文土偶はほとんどが女性型をしており、多くがその一部が意図的に破損された状態で見つかっているという。理由は諸説あるものの、久保は「壊した土偶の断片を土に撒く事で豊穣を願っていた」という説に注目した。
西畠とコラボレーションした本作の周囲には様々な植物が植えられており、まるで長い年月そこにあったかのように横たわっている。会期中も、日光や風雨の影響を受けて日々変化していく。
