会場のなかでも目を引くのは、ブラックライトに照らされた一室だ。ここに展示されるのは、南オーストラリア州の内陸にあるウーメラ出身の作家、イワニ・スケースによるガラス作品の数々。中央に配置された宙吹きのウランガラスによるインスタレーション《えぐられた大地》(2017)は、ウランの採掘が盛んに行われた結果、故郷の土地が損なわれ、環境やそこに住む人々の健康に大きな被害をもたらしたことを示している。


また、同地はイギリスによって核実験が行われた場所でもあり、現在も立入禁止区域として指定されているという。ガラスという繊細な素材と造形を扱いながらも、その特性と歴史的文脈を結びつけながら、自身の故郷で起こった出来事を作品を通じて我々に伝えてくれている。

ジュリー・ゴフが拠点とするタスマニア州はとくに植民地主義のなかでも非道な扱いを受けた場所だ。この思想による同化政策を受けて、アボリジナルの家系を持つ多くの人々は虐殺や疫病で命を落としたという。
この座面のない椅子に83本の槍が刺さった作品は《1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》(2008)というタイトルだ。当時、これらの政策のなかでアボリジナルの親から引き離された子供たちが存在し、その数はタスマニア・アボリジナルの子供たちの約3分の1を占めるという。ゴフはその子供たちの名前をできるかぎり調べ上げ、槍の先一本一本にその名を焼き付けている。ここに刻まれた子供のなかには、ゴフの祖先も含まれるのだという。

