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「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+分かり方)」(横浜美術館)開幕レポート。「作り方を作る」を続けた40年とその現在地を見る【5/5ページ】

あの『ピタゴラスイッチ』の装置も

 佐藤の取り組みとして語らずにはいられないのは、NHK教育テレビの大人気番組『ピタゴラスイッチ』だ。本展では特別展示として、あの「ピタゴラ装置」の現物が展示。この装置も、先ほど紹介した佐藤雅彦研究室による活動の一端でもある。

 加えて、会場には佐藤によるインスタレーション作品や、アートディレクターの中村至男らとともに制作されたポスター作品などが紹介されているほか、「買った後に本棚に入れっぱなしにならないよう」工夫された図録から本展グッズ、カフェメニューに至るまで、佐藤によってディレクションされたコンテンツが多数用意されている。展覧会とあわせて充分な時間をとって体験することをおすすめしたい。

展示風景より
展示風景より

 担当学芸員の松永が「佐藤雅彦ほど、作品の知名度に比べて名前が知られていない表現者はいないのではないか?」と問うたことに対し、「つくったものが表に出るほうがいい」と返す佐藤。その言葉は、クリエイティブにおける華やかな表面部分よりも、「どうしたらおもしろさを伝えられるのか」「どのような方法があればおもしろいものをつくり続けられるのか」と言った「仕組み」に対する佐藤自身の強い関心がうかがえるものであった。

 ちなみに、佐藤は現在、自身が代表理事を務める教育文化財団とともに、出身である静岡・沼津にて「富士山と海を見ながら考えるミュージアム」の設立を構想。市にこの計画を提案し、2029年の完成を目指しているという。「作り方を作る」「どうすれば、伝わるのか」を様々なメディアを通じて実践してきた佐藤。佐藤をかたちづくってきたこの思想が、未来の来場者に息づくきっかけとなるような施設であることを期待したい。

展示風景より

編集部

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