東京都庭園美術館副館長の牟田行秀は、本展の意義について、次のように語った。「東京都庭園美術館は、アール・デコ期の旧朝香宮邸というユニークな環境を活かした展覧会を開催してきた。ここまで往時の佇まいを残したアール・デコ建築は珍しい。出品作品である《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》も、朝香宮夫妻がきっとアール・デコ博覧会で見たものだろう。時代を超えたアール・デコの邂逅を見ることができる特別な展覧会になるはずだ」。
本展を担当する同館学芸員の方波見瑠璃子は、コンセプトについて次のように説明する。「アール・デコとはなにか、その本質を追い求める展示を目指した。効率化を目指した20世紀初頭において、アール・デコは装飾という遊び心を通じて、日常のなかの遊びを提案した芸術運動だったといえる。そのデザインが現代において共感を呼び起こす普遍性を持つのも、こうした精神がいまと共通するからではないか。ジュエリーと空間の双方を見ながら、アール・デコの装飾原理についての理解を深めてもらえれば」。
また、会場デザインを担当するのは西澤徹夫建築事務所の西澤徹夫だ。西澤は本展のセノグラフィーについて次のように述べた。「長い歴史を持つヴァン クリーフ&アーペルと東京都庭園美術館が出会う場をどのようにつくるのかを考えた。ジュエリーを演出することでも、建築をよく見せることでもなく、両者が対峙し向き合っていることを示すことができるよう、異なる素材を組み合わせながら設計した」。