「ART OSAKA 2025」開幕レポート。本フェアならではの多彩な表現を一挙に味わう【3/9ページ】

 大阪府内の障がいのある人の作品を、現代美術のマーケットに紹介するプロジェクト・capacious(カペイシャス)は、松本国三、平野喜靖、平田安弘の3作家を紹介。とくに平野の、印刷物の文字を抜き出し、カラーボールペンを使って独特のタイポグラフィを展開する作品は、文字の意味を解体しグラフィックとして見せる試みとして興味深い。

capaciousの展示風景より、左が松本国三の作品、右端が平野喜靖の作品

 東京のEUKARYOTEが出展している磯村暖の新作にも注目したい。AI生成による写真と多層的な立体構成を用いて、アクリルボックスの中に「家系図」を描くという本作は、磯村が自身の未来像としてAI生成した3つの自己像が、3人の親として登場する。クィアとして自らの遺伝子に複雑な思いを抱いてきた磯村が、遺伝子や家族といった概念に挑戦した意欲作だ。

EUKARYOTEの展示風景より、磯村暖《Family Tree 135》

 東京やシカゴでインディペンデント・キュレーターとして活動を行い、美術展の企画や出版を手がけてきた小出由紀子による小出由紀子事務所は、古くよりアール・ブリュット作品を扱い、国外のフェアで存在感を示してきた。会場では沖縄・那覇で活動する儀間朝龍(ぎま・ともたつ)を紹介。古着、スニーカー、ポップアートといったアメリカの文化に強い影響を受けた儀間は、それらがはらむ商業との関係性をダンボールやパッケージを素材に、パロディを加えつつ表現している。ほかにも儀間は福祉作業所との協働によってステーショナリー・ブランドを手がけるなどの試みも行っており、本徹は儀間の多様な活動を知ることができる場となっている。

小出由紀子事務所の展示風景より、儀間朝龍の作品

 大阪のWa.galleryは、クライアントワークを中心としたカメラマンとして活動してきた奥山晴日の初個展を行っている。日本各地の信仰によって生まれた「聖域」に興味を持った奥山は、その地を大判カメラで撮影。撮影時には蛇腹によってピントを変える大判カメラの特徴を活かし、聖域にピントを合わせた後、そのピントを外すという手段をとる。現代においてはつねにカメラを向けられ消費されていく古来からの聖域にかつて存在した、人々の原初的な信仰心を写し取ろうとする試みだ。

Wa.galleryの展示風景より、奥山晴日の作品

 ほかにもGalleriesセクションでは、本フェアならではの関西を拠点とした作家の作品や、斬新な表現を見ることができる。

編集部

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