中国に誕生した超巨大美術館。「Ennova Art Museum」で見る南條史生ディレクションの芸術祭【3/7ページ】

第1章「Sound Consciousness」

 第1章「Sound Consciousness(音声の拡張)」は、芸術表現の素材としての「音」に焦点を当てた章となる。20世紀半ば以降、芸術表現の素材として音を使うことは一般的になり、とくにパフォーマンス・アートでは、重要な要素とされてきた。本章では「音」を手がかりにアーティストたちの作品を見ることができる。

展示風景より、ムタズ・ナスル《The Tabla》(2003)

 とくに、この章では日本人作家の活躍が目立つ。古い電化製品を楽器としてパフォーマンスを行う和田永は、代表作のひとつである、ブラウン管テレビを打楽器のように手で叩き、ノイズによるリズム・パフォーマンスを展開。すでに使われなくなって久しい機械を使って和田がつくりだしたまったく新しい音は、音を発生させるものは何でも楽器になり得るという、拡張の現場が提示されているといえるだろう。

和田永《TV Drums》(2010〜)

 「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という3つのコンセプトのもとに、発光ダイオード(LED)を使用した作品などを制作してきた宮島達男。本展では《Counter Voice Network》と名づけられた、音についての作品をひとつの展示室を全面的に使用して展開した。壁面に設置されているのは、やかん、スーツケース、扇風機、三輪車といった身の回りの品々だが、それらには小さなスピーカーがつながっている。スピーカーからは様々な言語によってカウントダウンをする音声が聞こえており、展示室内ではそれら音声が響き合い、また散りばめられた日用品のイメージとともに、様々な記憶が喚起される。

展示風景より、宮島達男《Counter Voice Network》(2024)

 第18回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞するなど、すでに国内では高く評価されてきた坂本龍一と真鍋大度による《Sensing Streams》も、本館の広大な展示室で展開されるとことなった印象を受ける。通常の生活では知覚することのできない「電磁波」をセンシングし、可視化・可聴化する本作。ダイヤルを回し、周波数を変えることで、身の回りで飛び交う電磁波が、立体的な音響と高精細な巨大なディスプレイによって明瞭なかたちをもって立ち上がる体験は、テクノロジーによって計画的な都市づくりが進む中国で見るとき、より多層的な意味が発生していた。

展示風景より、坂本龍一+真鍋大度《Sensing Streams》(2024) ※1月14日までの展示

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