常設作品にも注目
本ビエンナーレとともに、同館の常設作品も見ることができるが、いずれもそのスケールは目を見張るものがある。とくに、北京を拠点とするソン・ドンの 《A Quarter》(2021-24)はこの館に来たならばぜひ見るべき作品といえるだろう。巨大な空間が鏡で覆われており、そこに船が浮かんで無限の奥行きをつくり出している。

空間のなかにはアーティストが収集したランプがいくつも灯され、海上の燈火のように鏡の空間にいくつも浮かんでいる。来場者は船に乗ったり、鏡の海を歩いたりすることもでき、この空間のなかに没入することができる。作家はここを現実と仮想の融合空間、そして思考のためのプラットフォームと位置づけている。

圧倒的なスケールを持つイノヴァ美術館で、国際的なキュレーションのもとに展開される「Ennova Art Biennale vol.01」。美術館の設立が相次ぐなかでと同時に、日本人のキュレーターやアーティストが、中国の美術館において様々な制約のうえで成果を上げた一例としても重要だ。大きく変わり始めた中国の現代美術シーンのいまが現れている芸術祭といえるだろう。