第4章「Multiple realities (後人新世)」
最後となる第4章「Multiple realities (後人新世)」は、アートが描く未来についての多様な現実、世界観を紹介。とくに科学技術との関連が深い作品が展示されている。

映像と音響による巨大なインスタレーションで知られる池田亮司の《test pattern [nº15]》は、圧巻のスケールを持つ本館だからこそ実現できた迫力がある作品だ。暗闇につつまれた展示空間のはるか奥から、モノトーンのパターンがノイズととともに波のように明滅して押し寄せる本作は、例えば雄大な山岳や壮大な瀑布といった自然のダイナミズムを思い起こさせる。人類の電子技術によって、人類がいなくとも存在するであろう世界を現出させた作品といえる。

イタリアのアーティスト・デュオ、ペッカ&テイジャ・イソラッティアは、ロボットによる場末のバーを会場に出現させた。バーに座っている3体のロボットは、その口調からまるで人間のように酔っ払っていることがわかる。2体は互いに悪口を言い合っているが、3体目は突然、詩を朗読。アルコールによって対話がかき乱された人間同士の会話をロボットがトレースしていることが滑稽であるが、同時に非人間的存在が人間を見るときもこのような滑稽さを感じているのかもしれないという想像がかき立てられる。

ドイツを拠点とするキャロリン・リーブル+ニコラス・シュミットプフェーラーは、意志を持ったロボットが、周囲の環境との間で葛藤を繰り広げるインスタレーションを展開。ロボットはスピーカーからの音声とモーターによる動作でコミュニケーションをとっており、ロボットと環境の緊張関係により構築されるこのぎこちない空間は、人間社会の写し鏡ととらえることもできるだろう。
