中国に誕生した超巨大美術館。「Ennova Art Museum」で見る南條史生ディレクションの芸術祭【6/7ページ】

第4章「Multiple realities (後人新世)」

 最後となる第4章「Multiple realities (後人新世)」は、アートが描く未来についての多様な現実、世界観を紹介。とくに科学技術との関連が深い作品が展示されている。

展示風景より、ジャン・ウー+メン・シェンユー《One and Three Objects,and An Attempt at Exhausting the Object》(2021)

 映像と音響による巨大なインスタレーションで知られる池田亮司の《test pattern [nº15]》は、圧巻のスケールを持つ本館だからこそ実現できた迫力がある作品だ。暗闇につつまれた展示空間のはるか奥から、モノトーンのパターンがノイズととともに波のように明滅して押し寄せる本作は、例えば雄大な山岳や壮大な瀑布といった自然のダイナミズムを思い起こさせる。人類の電子技術によって、人類がいなくとも存在するであろう世界を現出させた作品といえる。

展示風景より、池田亮司《test pattern [nº15]》(2024)

 イタリアのアーティスト・デュオ、ペッカ&テイジャ・イソラッティアは、ロボットによる場末のバーを会場に出現させた。バーに座っている3体のロボットは、その口調からまるで人間のように酔っ払っていることがわかる。2体は互いに悪口を言い合っているが、3体目は突然、詩を朗読。アルコールによって対話がかき乱された人間同士の会話をロボットがトレースしていることが滑稽であるが、同時に非人間的存在が人間を見るときもこのような滑稽さを感じているのかもしれないという想像がかき立てられる。

展示風景より、ペッカ&テイジャ・イソラッティア《Robohemians》(2022)

 ドイツを拠点とするキャロリン・リーブル+ニコラス・シュミットプフェーラーは、意志を持ったロボットが、周囲の環境との間で葛藤を繰り広げるインスタレーションを展開。ロボットはスピーカーからの音声とモーターによる動作でコミュニケーションをとっており、ロボットと環境の緊張関係により構築されるこのぎこちない空間は、人間社会の写し鏡ととらえることもできるだろう。

展示風景より、キャロリン・リーブル+ニコラス・シュミットプフェーラー《Vincent and Emily》(2018)

Exhibition Ranking

見附正康

2025.05.23 - 07.05
ARTRO
京都

木梨銀士「Flux」

2023.02.02 - 02.17
GALLERY HAYASHI + ART BRIDGE
丸の内 - 銀座|東京

非常の常

2025.06.27 - 10.04
国立国際美術館
大阪

Dressing Up: Pushpamala N

2025.06.26 - 08.16
シャネル・ネクサス・ホール
丸の内 - 銀座|東京