第3章「ありのままでいたい」は、「きれいになりたい」とは異なる欲望として、自分自身を肯定し、認めてもらいたいという願いを反映したセクションだ。

ここでは90年代に下着を表に出すスタイルを打ち出したシャネル、グッチ、プラダなどの衣服が並ぶ。本来は隠されているべき下着、そして肌を露出することは自身の身体をそのままに表現する方法のひとつといえる。

90年代にミニマルなファッションを牽引したヘルムート・ラングは、モノトーンのシャツやパンツと組み合わせるためのベルトやカバー状のピースを発表。洋服の構造を削ぎ落としていくことで、その内部にある身体を強調した。

本章では、ヴォルフガング・ティルマンスの写真インスタレーション《Kyoto Installation 1988-1999》(2000)も壁面に展示されている。80〜90年代にかけての若者文化やゲイカルチャー、クラブカルチャーなどの一端をとらえた写真からは、生々しい身体への希求を読み取ることができるだろう。

「私を巡る問い」と題された、松川朋奈の絵画作品シリーズにも注目したい。様々な女性にインタビューを行い、写真を撮り、話を聞きながら、彼女たちが現代社会で直面している問題や違和感をモチーフに描いた作品群。「ありのままの自分」を社会の中で認知することの困難さという根本的な問題を想起させる。
