写経の美と名僧の墨蹟
第六章「写経の美と名僧の墨蹟」には、日本を代表する古写経が並ぶ。例えば《金光明最勝王経(国分寺経)》(奈良時代)は、聖武天皇が各国に国分寺を建立し、その塔に金字の金光明最勝王経を安置することを命じたその国分寺経であり、聖武天皇の仏教政策を直接伝えるものとして重要な存在だ。

未来への祈り
展示の最後は、真っ白な空間で《菩薩半跏像(伝如意輪観音)》(平安時代)が静かに鑑賞者を迎えてくれる。中国・唐代の檀像彫刻に由来する緻密さと、奈良時代の乾漆造の仏像から受け継いだ着衣の質感が融合した傑作をゆっくり鑑賞してほしい。


豪華絢爛な国宝の共演という側面のみならず、奈良博の歴史をたどりながら文化財を顕彰・継承することの重要性を伝える本展。2ヶ月という会期で巡回もないため、同会期開催の京都国立博物館とあわせて訪れてみてほしい。