瀬戸大橋エリア
1960年代に大規模な埋め立てによって四国本土と陸続きとなった瀬居島は、これまで芸術祭の会場であった沙弥島と同様の成り立ちを持つ。今年の瀬戸内国際芸術祭では、エリア名称を「瀬戸大橋エリア」と新たに定め、初めて瀬居島が公式会場として加わった。すべて新作で構成される「瀬居島プロジェクト」は、今年の芸術祭のなかでも注目すべき試みだ。

中心となるのは、中崎透がディレクションを務めるプロジェクト「SAY YES」。旧瀬居中学校、小学校、幼稚園、さらには集落全体を舞台に、16名のアーティストによる多彩な作品が展開されている。プロジェクト名は、中崎が現地を訪れた際、頭のなかに流れた90年代ドラマの主題歌に由来するという。

旧瀬居幼稚園では、中崎透による《M Say-yo, chains, what do you bind or release?!》が展示されている。島民から聞き取った言葉をもとに制作された本作は、個人の小さな出来事と地域の記憶が交錯する物語世界を描き出す。埋め立てによって「島でなくなった」瀬居島という地の象徴性と、そこに潜む「つながり」と「束縛」の二面性を問いかけるインスタレーションだ。

旧瀬居小学校では、小瀬村真美による《自然の/と陳列》が理科室に残された実験器具や資料を再構成するかたちで展示されており、新たに撮影された写真シリーズ「静物─旧瀬居小学校」を中心に、場と記憶の再編成が試みられている。狩野哲郎は《既知の道、未知の地》と題したインスタレーションを展開。鳥の視点を取り入れ、日用品や自然物を組み合わせたオブジェによって、他者の感覚から見た瀬戸内の風景を想像させる作品となっている。

